PA活動における業界団体の重要性
パブリックアフェアーズを実行する際、自社名義で行うべきか、それとも業界団体などを活用すべきかで悩む方は少なくありません。本稿では、パブリックアフェアーズ活動を行う主体(WHO)をどのように考えるべきかについての視点を提供します。
近年、「パブリックアフェアーズ」という言葉が企業経営や組織運営において注目を集めています。VUCAの時代に複雑化する社会において、自社のビジネスを守り、持続的な成長を実現するためには、行政機関やステークホルダーとの良好な関係構築が欠かせません。その一環として、自社の立場や業界全体の意見を政策形成プロセスに反映させる「パブリックアフェアーズ」は、極めて重要な戦略となります。
しかし、実際にパブリックアフェアーズを実行する際、自社名義で行うべきか、それとも業界団体などを活用すべきかで悩む方は少なくありません。本稿では、パブリックアフェアーズ活動を行う主体(WHO)をどのように考えるべきかについての視点を提供します。
自社単独で自社名義で活動する
まず、第一に考えられるのが、自社単独で自社名義で活動する方法です。
メリットとしては、自社の意見をストレートに訴求できるため、主張のコントロールがしやすく、細部にわたって自社の主張を反映しやすい点が挙げられます。また、いわゆるソートリーダーシップの獲得を目指すような活動の場合には、自社の名前を積極的に出していくべきと考えられます。社名を前面に出すことで、社会問題に積極的に取り組む姿勢を示しながら、業界内外で自社のプレゼンスを高め、ステークホルダーや顧客からの信頼獲得につなげることが可能です。
一方、個社としての発言力は、経済団体や業界団体など大きな組織に比べると弱い場合が多く、とりわけ社会に大きな影響を与える政策テーマの場面では、自社単独意見としては説得力に欠けるケースがあります。また、自社単独での活動は大きなリソースを必要とします。提案する内容の整理、エビデンスの収集、ステークホルダー分析、アドボカシー活動などをすべて自社だけで完結するには、専門知識や人材をある程度確保しなければなりません。
経済団体や業界団体を活用する
第二の選択肢としては、経済団体や業界団体を活用し、団体名義でパブリックアフェアーズ活動を行うことが考えられます。経済団体や業界団体のメンバーとして意見表明することで、「業界全体の総意」という後ろ盾が得られ、自社の知名度が低くとも活用する団体の知名度やクレディビリティが高ければ、大きなインパクトを期待することができます。政策立案者やメディアからの注目度も高く、社会的に影響力のある広範なテーマへの対応には特に有効です。
また、団体には各企業から集まった専門家や、事務局に経験豊富なスタッフが存在することも多いため、個社のみでは得られない知見・情報やネットワークにアクセスしやすくなる利点もあります。その一方で、自社単独・自社名義での提案と異なり、団体内での意見集約過程によって自社の主張が十分に反映されない場合があります。最大公約数が優先されるため、個社の意見は薄くなりますし、さらに場合によっては自社に不利な方向に意見がまとまる可能性も否定できません。また、団体名義で意見が発信される場合は、自社名義でないため、PR効果が得られにくい点にも留意が必要です。
両方を使い分ける
以上のように、自社名義と団体名義にはそれぞれメリットとデメリットがありますが、実際には両方を使い分けることでパブリックアフェアーズの効果を最大化できる可能性があります。たとえば、業界や経済全体に関わる広範なテーマでは団体名義を用いて強いインパクトを出しつつ、自社特有の課題については自社名義でエビデンスをそろえてアプローチする、といった戦略が考えられます。
また、団体名義での意見提出は、表立って社名を出しづらいテーマへの働きかけをしやすくするケースもあります。社会的にデリケートな問題や、自社だけが取り組む新分野において世論の理解が得られるか不安な場合、団体の傘下で連携して取り組むことは有効な手段です。
結局のところ、パブリックアフェアーズを自社名義で行うか、団体名義で行うかは一概に優劣を決められるものではありません。以下のような観点で総合的に判断することが重要と考えられます。
- 目的との関係:政策形成へのインパクトを重視するのか、PR効果を重視するのかなど
- 自社の内部リソース:社内に専門人材や専門部門がどの程度あるかなど
- 他社・団体との関係性:他社や団体と協調しやすい業界かどうかなど
もし、自社内にパブリックアフェアーズの専門家や専任部門がなく、どのように活動を進めるべきか迷われている場合は、外部のプロフェッショナルファームに相談するのも有効な選択肢です。